20年間の取り組み
遠州の小京都・森町
森町は遠州の小京都と言われ、古くから塩の道と呼ばれる南北の交通路として、また秋葉神社の参拝路として栄え、町内には伝統のある神社仏閣、祭りや舞楽などの伝統が残る町です。東海道沿線からはそれていますが、平成24年に新東名高速道路が開通し、当院は、森掛川インターチェンジと遠州森町パーキングエリア・スマートインターの中間に位置し、また町内を走る天竜浜名湖鉄道については、平成27年に森町病院前駅が開設され、当院への交通の便は良くなりました。11月の「森のまつり」は、老いも若きも参加して、町内が一つになって盛り上がります。森町は、いろいろな地域の行事を通じて人々の結びつきが強い町です。
静岡県は、健康寿命においては全国トップレベルであり、静岡県が独自に算出した健康指標である市町別「お達者度」では、森町は男女とも常に上位に位置しています。この指標からすると森町住民は、大変元気な方が多いと言えるのではないかと思います。
静岡県は、健康寿命においては全国トップレベルであり、静岡県が独自に算出した健康指標である市町別「お達者度」では、森町は男女とも常に上位に位置しています。この指標からすると森町住民は、大変元気な方が多いと言えるのではないかと思います。
中東遠2次医療圏と森町病院
中東遠2次医療圏は、6つの市町で構成され、かつてはそれぞれの市町が運営する6つの公立病院が主として急性期医療を担ってきました。そして平成25年5月には袋井市立袋井市民病院と掛川市立総合病院が統合し、中東遠総合医療センターとして開院しました。現在、磐田市立総合病院と中東遠総合医療センターが急性期医療の中核的機能を担い、菊川市立総合病院と市立御前崎総合病院、そして当院が地域に密着した医療を担う方向で、5つの公立病院間の機能分化と連携が進んでいます。
森町の医療・介護施設は、開業診療所が6施設と人口あたりの診療所数が少なく、病院に隣接して老人保健施設が1施設、その他町内に特別養護老人ホームが2施設、グループホーム2施設の入所施設、小規模多機能施設が1施設あります。北部に広がる広大な中山間地には医療機関もなく、通院も困難な高齢者世帯に対して継続的に医療を提供することは公立病院としての当院の役割であり、当院は平成3年から訪問看護、平成4年から訪問診療を開始し、現在も継続しています。また平成27年5月から三倉大久保地区の公民館(三丸会館)で、月1回の巡回診療所を開設し家庭医を派遣しています。
当院は、平成9年3月の新病院開設当初は病床数140床で、3つの急性期病棟を運営してきましたが、平成21年10月に急性期93床、回復期リハビリテーション38床の合計131床とし、平成28年度から急性期病棟45床、地域包括ケア病棟48床、回復期リハビリテーション病棟38床とし、現在は3つの病棟を機能別に運営しています。
当院は、平成9年3月の新病院開設当初は病床数140床で、3つの急性期病棟を運営してきましたが、平成21年10月に急性期93床、回復期リハビリテーション38床の合計131床とし、平成28年度から急性期病棟45床、地域包括ケア病棟48床、回復期リハビリテーション病棟38床とし、現在は3つの病棟を機能別に運営しています。
当院の診療体制
平成9年3月の新病院開設当初の診療体制は、内科、外科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科が常勤体制、小児科は非常勤体制でスタートし、平成10年6月から小児科も常勤化し、7月に泌尿器科の非常勤体制での診療が開始しました。平成15年には泌尿器科が常勤化し、この年が当院の常勤医師数のピークでした。平成16年に始まった新臨床研修医制度の影響を受け、同年10月に耳鼻咽喉科が、平成17年度には眼科・泌尿器科が非常勤体制となって常勤医師数が減少し、同年皮膚科の非常勤体制での診療を開始しました。専門外来を充実させることで、常勤医師は急性期一般の診療を担い、より専門性を要する場合は専門外来の医師や近隣医療機関との連携で対応する方針としました。
当院の役割は地域住民が安心して生活できるよう、医療の立場から支援することとし、地域住民から医療に期待されることのうち、特に救急医療や、生活圏における継続的医療の提供を重要な柱と位置づけ、近隣医療機関との連携を重視することで地域の必要に応える方針でその後の病院運営に取り組んで参りました。
当院の役割は地域住民が安心して生活できるよう、医療の立場から支援することとし、地域住民から医療に期待されることのうち、特に救急医療や、生活圏における継続的医療の提供を重要な柱と位置づけ、近隣医療機関との連携を重視することで地域の必要に応える方針でその後の病院運営に取り組んで参りました。
キャッチフレーズ、目標管理発表会
当院では、平成12年度から毎年キャッチフレーズを作成し、職員の意識統一を図ってきました。また、同年度から部署別目標発表会を始め、現在も恒例の病院行事となっています。当初この会は、院内の目標管理を目的としていましたが、町長、副町長をはじめとして、役場の課長、町議会議員の方々にも参加していただき、さらに住民ボランティアの方にも参加していただくことで、地域に情報発信するための重要な役割も果たしてきました。
院内の環境整備
院内の環境整備としては、平成15年度にオーダリングシステムを導入し、引き続き平成16年度に(財)日本医療機能評価機構の審査を受けることで、院内の業務改善を行いました。平成17年度にMRIを導入し、地域の一般急性期医療を受け入れる体制は整いました。平成26年2月に電子カルテシステムを導入し、インターネットを介して訪問診療や巡回診療でも電子カルテを活用できるようにしました。
当院の役割と在宅医療
これまでの当院の変革の流れをまとめます。当院の役割を地域における急性期医療の提供と位置付けたことから、介護施設との連携を進め、急性期治療終了後の患者を適切な療養の場に繋げるため、平成12年3月に地域医療支援室を設置し、専従の看護師を置いて退院支援に力を入れてきました。平成15年4月に医療福祉相談室、地域医療支援室、医事課病診連携係を一つにまとめ、地域医療連携室とし、外部との窓口を一本化しました。平成20年1月に地域の中核的機能を担う隣接市の磐田市立総合病院と業務提携を結び、平成21年10月に回復期リハビリテーション病棟を開設することで、2次医療圏における当院の役割を明確化しました。
平成22年に在宅療養支援病院となり、そして平成23年12月に、病院に隣接する土地に森町家庭医療センターを建設し、在宅医療の担い手でもある家庭医の養成に取り組んでまいりました。平成24年に在宅医療連携拠点事業を受託したことを契機として在宅医療支援室を立ち上げ、在宅医療コーディネーターの育成に取り組み、平成26年度には地域包括ケア病床を導入し、段階的にその数を増やし、平成28年3月に地域包括ケア病棟とし、在宅療養を継続する患者や家族を支援する入院機能も整備してきました。
森町は、高齢化率で全国平均を10年先取りしており、高齢化が進むにつれ地域に必要とされる医療ニーズも変化してきたことから、積極的にリハビリテーションを行える患者には回復期リハビリテーション病棟を、積極的なリハビリが困難な患者に対しては地域包括ケア病棟でポイントを絞ったリハビリや生活指導を行うというように、患者の状態に合わせ、生活につなげる医療の選択肢を提示する方向で病棟機能を変化させてきました。
地域包括ケア病棟では院内デイケアも開始し、高齢者であっても持てる機能を十分活かして本来の生活の場に戻れるように支援してきました。退院支援部門の地域医療連携室と在宅医療支援室が密に連動することで、「ときどき入院、ほぼ在宅」が実現可能となっています。これらの取り組みを行ってきた結果、病床稼働率も改善し、平成28年度はそれまで達成できていなかった経常収支黒字を実現することができました。
家庭医の養成
新臨床研修医制度が始まってから当院は、磐田市立総合病院から研修医の地域医療研修を受け入れることとなり、その後磐田市立総合病院、菊川市立総合病院と当院が共同で、静岡家庭医養成プログラムを立ち上げることになりました。
平成23年12月1日に森町家庭医療センターを建設し、それまで森町病院内にあった訪問看護ステーションも、家庭医療センター内に移動しました。家庭医療センター建設の目的は、若手医師の研修の場を提供することと同時に、地域に新たな医療の形を提示し、時代の変化に適合した医療提供体制を構築することで、森町での医療を持続可能とすることでした。現在は家庭医療センターにおいて、磐田市立総合病院からだけでなく、中東遠総合医療センターや焼津市立総合病院、浜松医大からの初期研修医の地域医療研修を受け入れています。医師研修を通じて病院間の連携が、さらに円滑となることを期待しています。
国の医療財源も限られ、今後さらに急性期医療の集約化は進み、地域ではそれを補完する役割が求められます。高齢化に伴い一人で多くの健康問題を抱える患者や、通院が困難で在宅医療を必要とする患者がますます増えることが予想されます。そのような中、総合的診療能力をもった医師の育成は、新たな医療提供体制構築のために必須の課題となってきており、国は「総合診療医」を、医師の19番目の専門領域として位置づけました。森町で開始した家庭医養成プログラムはまさにその流れを先取りしたものです。現在森町での在宅医療の担い手は、病院医師から次第に家庭医に移行し、病院はそれをバックアップする入院機能へと役割分担の変化が進みつつあります。
救急医療の提供
森町には当院以外に救急医療の受け皿が少ないことから、当院では一次救急患者も含めて全ての救急患者を受け入れる方針で取り組んでまいりました。平成18年度から地域の開業医の先生方にも週1回、18時から22時までの当直業務に関わっていただくことで、地域の医師会との連携も進めてきました。平成28年度の救急データでは、森町住民の救急患者の85.6%が当院を受診し、7.9%が磐田市立総合病院、6.3%が中東遠総合医療センターとなっています。一方、当院の救急受診患者のうち66.4%が森町住民で、残りは周辺地域からの救急患者です。救急車で来院される患者は全体の7.8%、当日入院となる患者は8.5%、当日他院に転送となる患者は全体の0.7%でした。この比率は毎年ほぼ変わっていません。家庭医も救急の当直業務に参加しています。現在磐田市立総合病院と中東遠総合医療センターの2つの救急救命センターが当院のバックアップ機能を担っているからこそ、当院でも初診患者の全てを受け入れることが可能となっています。
各施設との多職種連携
当院は、町内介護施設との連携を強化してまいりました。日頃から医療と介護が連携することで介護施設からの不必要な救急受診が減り、施設での看取りも可能となります。自宅での療養が困難な患者にとって、介護施設は療養の場の選択肢となっており、医療の支援があることは介護職のやりがいにもつながっています。当院が在宅医療連携拠点事業を受託した平成24年度から近隣の医療、介護関係者、行政職員、民生委員やボランティアの方々などが一堂に会する「多職種合同カンファレンス」を開催しています。現在も町の保健福祉課との共催で年3回定期的に開催し、お互いに顔の見える関係を構築しています。専門職同志の連携があってこそ生活する人々の安心につながり、今後ますます多職種連携は重要となります。
地域住民との連携、そして当院のこれから
今後医療技術が進歩し、専門分化が進む中で、コストがかさむ高度医療、技術集積性が求められる専門性の高い医療はさらに集約化が進むと思われ、一方人々の生活圏では、高度医療を補完する生活支援型医療のニーズが高まります。当院のような自治体立中小病院は、行政と一体となり、地域の特性や患者個々の価値観に合わせたフレキシブルな対応が可能であり、そのことからすると、地域包括ケアシステムの中心的役割を担うことが当院のような中小病院の使命であると思われます。
当院は、地域医療のキーワードは連携であるという立場で病院運営に取り組んでまいりましたが、自治体病院にとって最も重要なのは地域住民との連携です。平成10年12月に花壇ボランティア「あすなろ会」が発足し、病院玄関前の花壇に年間を通じて花で飾っていただいています。平成11年2月に発足した病院ボランティア「かわせみの会」は、院内の患者案内や、患者の視点からの情報提供など、さまざまな点で病院運営を支援していただいています。また平成22年9月に住民有志によって設立された「森町病院友の会」は、定期的に地域懇談会を開催し、医療についての勉強会であったり、住民と病院職員との情報交換の場を設けたりするなど、医療と住民との架け橋としての役割を果たしてきました。医療の変革が求められる時代、地域住民の医療への理解は、改革を進めるうえで極めて重要な要素です。
森町病院新築移転から20年間、当院はさまざまな改革に取り組んできましたが、今後も地域医療の課題は山積みです。当院は、これからも「地域と共に在る病院」として歩んでまいります。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
当院は、地域医療のキーワードは連携であるという立場で病院運営に取り組んでまいりましたが、自治体病院にとって最も重要なのは地域住民との連携です。平成10年12月に花壇ボランティア「あすなろ会」が発足し、病院玄関前の花壇に年間を通じて花で飾っていただいています。平成11年2月に発足した病院ボランティア「かわせみの会」は、院内の患者案内や、患者の視点からの情報提供など、さまざまな点で病院運営を支援していただいています。また平成22年9月に住民有志によって設立された「森町病院友の会」は、定期的に地域懇談会を開催し、医療についての勉強会であったり、住民と病院職員との情報交換の場を設けたりするなど、医療と住民との架け橋としての役割を果たしてきました。医療の変革が求められる時代、地域住民の医療への理解は、改革を進めるうえで極めて重要な要素です。
森町病院新築移転から20年間、当院はさまざまな改革に取り組んできましたが、今後も地域医療の課題は山積みです。当院は、これからも「地域と共に在る病院」として歩んでまいります。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。